あいのり 第405話
「懸け橋」
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ラブワゴン車内では、ゾマホンが木の棒を出していた。これは、歯ブラシで樹液が歯磨き粉の役割を果たし、丈夫な歯を作ってくれるという。メンバーのほとんどが、ゾマホンの会話を聞き入っていたが、こーすけだけが目をそらしていた。

その後、話題は、日本人の恋愛の話になる。結婚まで決してHをしないというポリシーを持つ、ゾマホンにとっては、到底考えられない話が続く。がいままで6人の男性と付き合ったと言った時点でゾマホンは、キレはじめ、こーすけがそれに応じた。
しかし、こーすけもだんだんとゾマホンの態度にキレかかってきて、結局「話にならない。」と思い空気が流れるだけであった。

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そのまま、ラブワゴンは、北へ200kmほど走り、ゾマホンの故郷だという、「イガンガン村」に到着した。
到着するや否や、ゾマホンは、村の長老に歓迎を受ける。その後も村人たちが集まり、ゾマホンに握手を求めてきた。
実は、ゾマホンは、ベナンでは、超有名人で、「大統領特別顧問」という肩書を持つ。

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********** 波乱万丈伝 「ゾマホン・イドゥス」 **********

1964年、イガンガン村で誕生、幼い頃に父を亡くし、母と弟2人の4人で暮らしていた。小学校は、10kmの山道を片道5時間をかけて通学した。貧乏なため、文房具は購入できなかったが、勉強は好きで得意科目は歴史であった。昼食は、弁当屋さんが1食10円で販売していたが、ゾマホンは、買えなかったので、学校の井戸の水を大量に飲み飢えをしのいだという。
学校から戻ると、畑仕事の後、夜は、勉強をした。電気はないため、街灯の光を頼りに外で行った。

ある日、地理の授業のとき、日本のことについて勉強をしていた。先生は、「日本人は、みんな、ちょんまげをしていて刀を差し、切腹する野蛮な人たちです。」と教えた。ゾマホンは、真に受け、「そんな、野蛮人ばかりの国が先進国なんて信じられない。」と、日本に対してすごく興味がわいてきた。それは、いつしか、日本に行きたいという思いに変わっていた。

その後、国立大学を優秀な成績で卒業したゾマホンは、大学の友人の父である人の助けを借りて、日本に上陸することとなった。しかし、ゾマホンが見た日本は、イメージとは、180度違うものであった。街はきれいだし、刀を差してちょんまげをしている人など誰もいなかった。

日本では、高円寺の工場でアルバイトをしながら生活をした。それは、助けを借りた友人の父が経営する工場であった。日本語学校へ通うために始めたものであったが、ある日、過労から、機械に指を挟まれ、切断する事故を起こしてしまう。しかし、それでも経営者を恨むことはなかった。

3か月後、助けを借りた経営者が亡くなってしまう。残された手紙には、「日本とベナンの懸け橋になってください。」と書かれていた。

ある日、外でみそラーメンを食べていると、タレント事務所から、「座っているだけで1万2千円、テレビ番組に出てみないか?」と声をかけられた。またとないチャンスと考え快諾し、TBS系列で放送された、「かなり変だよ日本人」に出演した。
番組の収録中、ただ座っているだけなら、1/150の花で終わっていたかもしれない。しかし、ここで、激論を交わしたことで視聴者の人気者となり、自伝を出版するまでになった。これで得た収益は、祖国での学校建設に使われたと言う。
この功績により、現在は、「大統領特別顧問」に任命されている。

現在、ゾマホンは、日本で、築30年、6畳1間、風呂なしのアパートに住む、生活費は家賃込みで8万円までと決めており、それ以外の金は、すべて、祖国のために使用しているという。現在の夢は、「学校を作りたい。」だそうである。

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あいのり #405

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